ついに2025年がスタートし、市場は今月下旬に発足するトランプ次期米政権がどのような政策方針を具体的に打ち出すのかに関心を強めている。何より、トランプ氏が取り組みたいとしている関税引き上げや減税などの景気刺激策の行方が気になるところであり、基本的には「米インフレが再燃しやすく、米連邦準備制度理事会(FRB)は追加利下げに二の足を踏むこととなる可能性が高い」ということになろう。
むろん、トランプ氏の関税強化に関する発言の多くは「あくまで同盟国や貿易相手国から最大限の利益や譲歩を引き出すための“脅し”の手段であって、実現可能性はそれほど高くない」と見る向きも少なくはない。とはいえ、現状において市場では「今年の米利下げは想定以上に少ない回数・幅に留まる」との見方が根強く、一部には「米利下げはない」とのタカ派な見方まであることも事実である。
まして、足元では米国経済がなおも力強さを堅持していると見られる指標・データが少なからず確認されている。先週3日に発表された12月のISM製造業景況指数の結果も市場予想や前回数値を上回り、ことに「新規受注」と「生産指数」が上昇していたことで米製造業が全体にしっかり持ち直してきていることを示していた。
「雇用指数」は大きく低下したが、米製造業の人員削減はそろそろ一巡すると見る向きも少なくない。また、製造業者とその顧客の「在庫指数」が縮小圏にあることで、当面は受注が堅調に推移すると評価する向きもある。
もとより、米株価が依然として底堅く推移しており、市場関係者の多くは今年の米株市場に対する楽観姿勢を変えていない。米企業の業績拡大を支え続けている長期的な成長要因はなおも“健在”で、当面はトランプ次期米政権下での景気刺激策が一段の業績拡大に貢献するとの期待もある。当然、こうした状況下でドルに売りを仕掛けることには慎重な向きが多いと見られる。
トランプ関税がドイツをはじめとするユーロ圏全体の景気低迷に追い打ちをかけかねないとの見方も根強い。米ゴールドマン・サックスは、欧州からの全輸入品に10%の関税を課した場合、ユーロ圏のGDPは1%押し下げられると試算している。
ドイツやフランスなどでの政治不安もユーロ売りに拍車をかける格好となり、年明け2日のユーロ/ドルは一時1.0220ドル台まで下落。昨年11月22日安値=1.0330ドルをも下抜けたことで、テクニカル的にも下値のメドをつけにくい状態となってしまっている。以前から、多くのストラテジストが「2025年内にパリティ(1.00ドル)を試す」としており、現状ではそうした見方を否定することも容易ではない。
今のところ、市場では日銀の早期利上げ期待も後退している。1月(23-24日)の金融政策決定会合における利下げの可能性についても「完全に排除はできないものの、3月の可能性の方が高い」と見る向きが多いようである。
ただ、前回(12月30日)更新分で触れた通り、今月14日には氷見野副総裁が神奈川県金融経済懇談会に出席し、その後記者会見を行う。日銀が年明け最初の決定会合を前にこうした懇談会を開くのは、少なくとも2013年に黒田東彦氏が総裁に就任して以降では初めてのことであり、果たして「今回はどのようなメッセージが市場に届けられるのか」が大いに注目されるところとなる。
目下のドル/円は一目均衡表の週足「雲」上限に下値をサポートされており、目先的には日足の「転換線」が支持する格好となっている。一方で、上値も158円処で押さえられており、当面は156-158円のレンジから上下どちらに放れるかが一つの焦点となる。むろん、仮に上に放れても160円処は強い上値抵抗として意識されやすいと見ておく必要があろう。
(01/06 07:00)
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