トランプ大統領が矢継ぎ早に関税ディールを仕掛け、金融市場に大きなショックを与えた。カナダ、メキシコに高率関税を課すことは就任前から打ち出していたが、正式に25%と決め、発効日を明らかにしたことから、最初の市場となった東京株式市場では1000円を超す大幅な下落を示したことは、周知のとおりである。標的になったカナダドルが、2月3日には一時1.48目前まで暴落、一日で415ポイント(約2.8%)変動した(円に置き換えれば、4.40円動いた計算となる)ことでも、そのインパクトの大きさが実感できる。なにせカナダの輸出相手国別では71%がアメリカ(2023年)である。
ただ、当日のうちに、カナダ、メキシコともアメリカ寄りの解決策を提示したことで発効日は1か月延期と決まった。とりあえず騒動は治まり、カナダドル相場は今日にかけて1.4280まで買われ、12月中旬の相場に回復している。しかし、この交渉は前例になる、自ら「タリフマン(Tariff man)」と呼んで、関税を使った「MAGA(Make America Great Again、 アメリカを再び偉大な国に)」作戦は効果的だと言うことになり、トランプ大統領は今後ますます強気に出るだろう。しかし弱みを持っている相手国に対しては効き目があるが、力が拮抗している国~具体的には中国~に対しては、同様には考えられないだろう。ブーメランのようにアメリカが犠牲を強いられることもあると考えておかなければならない。
こんな状況で、我が石破首相が渡米して日米首脳会談の場に臨む。いまはトランプ大統領の頭の中は、地球儀が回っていることだろう。アイスランドやらガザなど、アメリカの領土拡大に積極的に動いている。ビジネスマンのトランプ大統領の本源は「Show me money!(口でなく具体的に数字<利益、出資金額など>を持ってこい。筆者が欧銀にいた時、よくこの言葉で圧力をかけられていた)」である。
関税引き上げ作戦だけが目立つが、これはあくまでMAGA戦略実現のための一つの戦術と見える。禅問答では話が進まない。即断即決となるような具体的なものをどれだけ持っていけるか、米国からとれるか、懐の広さ、強さが求められる。今回は単なるあいさつでは決してすまされない、一国のリーダー同士の真剣勝負である。世界の市場関係者は、今後の日米関係の優劣やトランプ-石破の結びつきの強弱を見抜こうとしている。それが通貨動向に影響を及ぼすことになる。
一方、金融市場を見ると、筆者は「円安時代は終わり、円高への道が徐々に進んでいく」と読んでいる。その一例が、「政策金利と物価の関係」である。改めて説明することではないだろうが、日米欧英の4か国についてこの関係グラフで比較すると一目瞭然で分かりやすい。
すなわち、4か国の内、日本だけが唯一政策金利が消費者物価(CPI)より低い、それも大幅にである。1月の決定会合を終えた後の状況は、
国名 政策金利 CPI(総合)<コア>
日本 0.50% (3.6%)<3.0%>(12月) *日本のコアは生鮮食品除く
アメリカ 4.25-50% (2.9%)<3.2%>(12月)
欧州 2.75% (2.5%)<2.7%>(1月速報)
英国 4.75% (2.5%)<3.2%>(12月)
比較すると、日本の政策金利が異常に低い。外から見ると、「インフレはそう簡単には治まらない、次は日銀が利上げをしていくはず」となる。今日も日本の10年国債利回りは1.296%と一段レベルアップして上昇、2011年4月以来の水準となった。今後の傾向として、円安より円高にバイアスがかかってくると想定している。
そこで、今後1週間の相場予想では、ドル円は151.00-154.00円と円強含みと予想。またユーロドルは、今週はドル安を受けて1.0300-1.0550とユーロ高に反転、ユーロ円は158.50-161.50円と予想する。そして英ポンドドルは1.2400-1.2650のポンド強含みを予想する。
(2025/2/5、 小池正一郎)
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